たかす雪まつり
 ちょうど一年前… cafeるりはさんで遊びつつ、ひるがの高原スキー場へ行った帰りに『たかす雪まつり』の会場に寄りました。
会場には大きな雪像が十数体! すでに溶けて原形が丸くなっていたり、壊れていました。 そのせいか、どの雪像も下手な作りに見え… 「これぐらいなら僕一人でも作れそうだなぁ♪」とナメた事を考えてしまった。
 そして更に驚愕の事実『優勝賞金30万円』と聞いて、来年参加しようと決意しました。


 雪まつりの会場で、一緒にスキーに行った仲間と「来年やろうね!」と冗談半分で約束しました。


 冬は暇な606。 2007年の年明け前からバタバタし続けた国境のないセブンデイに向けて全力を注ぎ… やがて春がおとずれて仕事も大忙し! 国境のないセブンデイと仕事に追われて、すっかり雪まつりの事なんて忘れてました。


 さらに季節は夏・秋と進んでセブン三昧な日曜日。 雪まつりの『雪』の字も頭にありません。 


 そして晩秋… cafeるりはさん一周年パーティーの時に、店主96さんから言われた一言… 「雪像作りやるの?」 完璧に忘れてました。 記憶にも無いくらい!
 「え?あ…まぁ…やれたらヤリたいですね♪」と返事を濁した覚えがあります。 


 12月も中旬を過ぎて何かと慌しくなってる時に96さんから雪まつりの件で電話をいただきました。 どうやら元旦から申し込みが始まるらしい。 『とりあえず申し込みはしておこう!』といういい加減な気持ちで「はい!もちろんヤリますよ!頑張りますよ!」と威勢良く返事しときました。


 個人的には9年間の義務教育期間で一番好きだった教科が美術でした。 ただ…ちょっと変わってて、絵を描くのも何かを作るのも学校では嫌で、家に宿題として持ち帰る生徒だった。 授業中は適当に下書きを製作するだけ。  
 それにはワケがあって… 友達が大勢いる教室や美術室では作品に集中できなくてヤル気が起きなかった。 家に帰って一人で集中して絵や物に取り組んでた生徒だったのです。 そりゃあ絵を描くのも何かを作るのも大好きだったから、家に帰ったら晩飯食べる暇を惜しんで、風呂も入らず完成するまで寝ませんでした。 

 
 そんな性格なので雪像作りは自分独りで作る覚悟だった。 独りで出来ると思ったし、可能な事だと自信に満ちてました。 もちろん96さんやチキチキ第七小隊の仲間には「独りで作る!」と言い張り… 手伝いに行くよと言われても「独りじゃなきゃ作れない!」と豪語してました。


 2007年の暮れに96さんから雪まつりの資料を送っていただきました。 3m×3m×3mの正方形の雪の塊り。 雪を圧縮するので、雪ではなく氷の硬さらしい。 「本当に一人で作るの?」と心配して96さんからは何度も電話がきました。 『男に二言は無い!』と言わんばかりに「もちろんです!」と言い張ってた606。
 96さんにとっても雪像作りは未知の世界だったので、昨年製作にあたった人達に話を聞いてくださり… 「絶対一人じゃ無理だよ!」と電話くれました。 その詳しい話を聞いて僕も納得。 △10さん一家とperoさんに急遽支援要請。


 1月4日に雪像作りの申し込み書が届きました。 賞金総額100万円! 最優秀作品賞1チーム/賞金30万円+副賞。 優秀作品賞A1チーム/賞金10万円+副賞。 優秀作品賞B2チーム/賞金5万円+副賞。

 参加費は基本的には無料! ただ、万が一のケガや事故の保険として一人200円を支払います。 チーム名『チキチキ通信』 代表606 参加者5名でエントリー。 エントリーはネットでも可能だったので1月4日に送信。 参加費の千円は現金書留で送金するつもりでしたが…急がないと20チームの受付に間に合わないと思ったので96さんが高鷲町役場まで直接支払いに行ってくださいました。 
 

 数日後、エントリー受付完了のメールが届きました。 20チームの参加受付だったので大急ぎでエントリーしたのに… エントリー番号は4番でした。  しまったー! ヤル気の表れを見せてしまったぁ〜。
 この日を境に雪像作りに向けて準備が始まりました。


 『何を作るか?』

 これには本当に悩みました。 『何を作るか?』 『何を作ったらイイのか?』 『何が作れるのか?』と、いろいろ似たり寄ったりの疑問符が頭に並んだ。 仕事が終わって寝るまで。 朝、目が覚めた瞬間。 仕事中でも暇があれば。 配達中も女子高生の短いスカートに気を取られるよりも景色の中から何かを探ってました。 実際、これだけで3〜4日を費やした。
 

 606的に最初は建物系で狙ってみました。 理由はただ一つ! 土台がしっかりしてるから作り易いという事。 
じゃあ何を作ろうかと… 審査員のウケを良くするには岐阜県にちなんだ建物がイイのでは! じゃあ岐阜県で有名な建物は… いろいろあるだろうけど一番最初に思いついたのがツーリングでも行った事のある合掌造りの民家。 

 …というワケで『合掌造りの民家』を雪で作ろう!という考えがまとまりました。
ありとあらゆる資料を集めてデッサンが完成。 大まかな二等辺三角形を作り、あとは落書き感覚で前後左右に細かい彫り物を描けば完成! という具合で…独り机上で盛り上がってました。

 ところが!
これまでの作品の写真を見てて建物は極わずか。 しかも建物となると精巧にに作られた立派なお城とかです。 合掌造りの民家でも上手く作れば高い評価を受けそうだったけど… 没!

 再び悩み続ける日々。 雪まつり… 雪… 冬… ベットに入っても眠れずに天井を眺めながら考えてたら、タンスの上に置いてあったチョッパー(アニメ/ワンピース)の縫いぐるみがバランスを崩して落ちた。 等身大の縫いぐるみだったので大きな音で驚いた。 縫いぐるみがひっくり返ったままでは、なんとなく気分が悪いので布団から出て置き直した。  その時に思った事… 「これを作ろう!」


 という事で、1月14日頃にアニメ/ワンピースに登場するトニートニー・チョッパーを作る事に決定しました。
「コレ(チョッパーの縫いぐるみ)と同じように雪のブロックを削ればいいや♪」という安易な気持ちで数日が過ぎ… ひたすら縫いぐるみを眺めて、「どこから削り始めようか?」「ここの角度は?」「ここからここまでの長さは?」と分からない事や作業手順(段取り)、それから作業分配まで… いろいろ考えてたらA4サイズのPC用紙が10枚以上になってしまった。
 なにせ等身大チョッパーとい事で採寸は簡単! 高さが上手い具合に60cmだったので測った長さを全部5倍にすれば3mにピッタリ♪


 遊ぶ事には労力を惜しまない606の集中力。 これぐらい仕事でも集中力を発揮したいと思って早16年。

 完璧な設計図と製作手順がまとまった! 我ながら感動(>。<)♪  この頃は頻繁に96さんと電話でやりとりしました。
15日〜17日までの2泊3日の件。 雪のブロックの硬さ。 道具。 道具を運搬する車の件。 ブロックの頂上に上って作業をするので、滑らないスパイク付きの長靴を用意していただくように頼んだり… 本当に面倒かけちゃいました。 
 優勝賞金を獲得したら申し込み代金・宿泊費・ガソリン代・長靴代をキチンと支払わなければいかんね!
もしかしたら参加賞置いてくるだけかも(^0^)


 そして2月に入り、僕は自分が必要だと思う道具をホームセンターへ買いに行きました。
配達の途中でちょくちょく寄って目星はつけていたのですが… いざ買うとなると悩みます。 ノコギリ・スコップは当たり前! 小さなスコップや、野球グラウンドで使うトンボの小さなやつみたいな道具などを一気に買いました。
 レジ係りの人… 僕がこれから遺体をバラバラに切断して、何処かの山に埋めに行くのでは?と思ったに違いない。
懲りなければまた来年も参加したいので、いろいろ揃えたら1万円ぐらい使ってしまった。 でも大きなスコップが千円以下で買えるなんて知らなかったし、ブルーシートのサイズで10m×10mなんて物まであるのも知って…驚きと感動の連続でした。


 週末に一度集まって作戦会議を開き、キチンと段取りを決めたいと思います。 2月3日と10日は打ち合わせの日♪


 2月3日(日曜日)
 ナイツさんの事務所をお借りして製作する作品の作り方や、10時間の段取りを一通り説明。
606の力説も虚しく…なんとなく空回りしてる感じで、ヤジやツッコミの応酬を喰らった。 作品の採寸にはかなりの時間を要してるので気合いが入り過ぎたみたい。
 真面目な質問には誠心誠意答えて、短時間で作戦参謀会議は終了しました。

 力説も熱弁も… 説明してる自分でさえ3m×3m×3mの立方体が想像できていない。 ブロックの硬さも分からない。 立体物はあっても採寸通りに彫って削って形ができる保証なんて無い。 とりあえずは単なる説明で精一杯だった。

 
 2月9日(土曜日)
 一年に一度は必ず大雪が降る。 しかも今日は想像を絶する大雪だったので雪の塊りを作ってイメージトレーニングをやってみました。
とても3m×3m×3mの立方体なんて作れないから50cm×50cm×50cmの立方体で挑戦! 道具箱から差し金1本持って来てサクサクと図面も見本も全く見ないで、イメージだけで作ってみました。  軟らかいブロックだったのでサクサクサクサクと形が作れて快感♪ それなりの形が作れてまたまた快感♪
 
 このイメージトレーニングで学び得たモノは多かった。 それは『極端にもろい』という事と『しっかりと寸法を測らないとダメだ!』という事。 
なにせイメージだけで作ったので顔が作れなかった。
そんな事などが606を精神的に不安にさせる事になり…当日の作品製作に大きく影響を与えた。
 とにかくしっかりと『採寸』通りブロックにラインを引かないと形が作れない! 張り出す部分を注意しないと折れて落ちてしまう!!


 2月10日(日曜日)
 昨日の事を踏まえながらボウリングやって遊びました。 来週(当日)の段取りを再度確認し合って解散。 ナイツ店主さんが見るに見かねて応援に駆けつけてくださる事になり、やや安心。
 △10さん御夫婦に工具類をcafeるりはさんまで運んで頂いたりと… 少しずつ戦闘モードになってきました。


 この頃の僕は配達以外でもホームセンターに通いまくり。 ゲームセンター嵐ならぬホームセンター嵐! 
建築用の墨うち壺まで買ったり、日常絶対使わないようなヘラやコテなども買った。 スパイクの無い長靴も買ったし… 前日(15日)の午前中なんて、スッゲー寒くなるという天気予報に驚いて発熱素材のフリースジャケットや保温性の優れたタイツなども買った。


 ■2月15日(金曜日)■
 今日は96さんファミリーとcafeるりはさんへ向かう段取り。 家を出発するまでに荷物のチェックをしまくるA型の悲しい定め! cafeるりはさんに到着したら直ぐに寝れるように風呂も入った。
 午後4時にスッゲー荷物とスッゲー期待を配達号に積んで家を出発しました。

 ナイツさんには午後5時過ぎに到着。 午後6時半に96さんがパジェロで迎えに来てくださったので荷物を積み替えてナイツさんを出発。 途中でラーメン定食を倒れるぐらい腹いっぱい食べた。 (正直、食べ過ぎてお腹が痛かった)

 96さん宅で奥さんと娘さんを乗せて午後8時過ぎにcafeるりはさんを目指しました。 途中、鳥山 明さんの家や清洲城を見せて頂いたし… スピード違反の取締りをやってる場所を事細かに教えてくれました♪


 ガラガラに空いてる東海北陸自動車道を進むと、暗かった道路が雪明りで浮き上がって見えるようになってきます。 夏なら真っ暗なはずの景色も雪明りで蛍光ブルーみたい♪ 606が言うのもなんだけど…メルヘンチックです。 まるでナイトスコープを使って見てるようでした。
メルヘンチックな景色を満喫し続けたかったのですが… 如何せん! ラーメン定食が未だに腹を苦しめます。 トイレに行きたかったけどA型の悲しい定めは『辛抱』という二文字を選択。


 高速道路を下りたら会場の下見の為、牧歌の里に寄りました。 既に完成されてる雪像(狛犬)の大きさに驚いた! そして3m×3m×3mの立方体の大きさに倒れた。 触ってみたら石のように硬い!! 殴っても蹴ってもビクともしない硬さ。 『雪のブロック』ではなく『コンクリートブロック』と表現した方が正しい。
 だけど僕は表面だけが凍ってて硬いだけだと即判断したのは、先週末の大雪で作った雪像で実証されていたから♪ 表面の氷の皮さえ捲ってしまえば後はスコップで彫ればOK♪ ノコギリで削れば楽勝だと思った。
 とにかく腹が痛かったし、中華料理店でビールを我慢していたので…早く到着してビール飲んで寝たかった。 時既に10時超え〜♪ お腹が痛くなかったら車の中で寝てたかも!


 cafeるりはさんに到着したら即『おやすみ』モード炸裂。 96さんとプチ前夜祭をして、お風呂で寛いで速攻で布団に入りました。 ここまで来たらとにかく明日頑張るしかない! 今さらジタバタしたって同じだし… 寝不足で雪のブロックから落ちても笑えない。 とにかく体調万全で明日を迎えなきゃ! 腹痛もビール飲んだら落ち着いたし♪ 短い空想時間で意識は消えました。


 ■2月16日(土曜日)■
 午前5時半起床。 普段よりも30分以上寝た。 体調万全! パワー満タン!
 午前8時から受付開始&作業スタートなので時間はたっぷりあるから、モーニングを頂いた♪ 朝からスッゲー美味い珈琲が飲めるだけで幸せを感じてしまう。 のんびり朝食が食べれるのは本当に幸せな事です。


 外気温−11℃近く。 日の出とともに雪景色が眩しい! 完璧な青空を眺めながら「今日は絶好の雪像日和だね!」と笑顔の96さん。 「作業してたら暑いぐらいだよ!」と笑顔の96さん。 
 確かに吹雪いていたり、雨という最悪のコンディションじゃないのは嬉しいけど… 暑くなったら細かい部分が溶けて落ちてしまうのではないだろうか心配顔の606。


 午前7時頃に△10さん・△10嫁さん・peroさんが到着。 暫くして僕と96さんで会場へ行って受付をしました。 並んだ順番が3番目! ここでもまたヤル気の表れを見せてしまった。
雪のブロックは抽選券を引いて決まります。 15個並んでるブロックには入り口から順番に1〜15まで番号がスプレーしてあります。 僕が引いた数字は9番! ほぼ真ん中辺りです。 僕的には真ん中辺りが良かったので幸先良いスタートでした。


 まずはパジェロでブロックの前まで行って資材・工具などを降ろします。 足元の雪は20cmぐらい柔らかく積もってます。 更にはブロックの上に30cmぐらい積もってます。 足元の雪とブロックに積もった雪が採寸の最大の敵でした。


 とりあえず足元の雪を除けてアスファルトを見つけます。 これは意外に楽でした。 しかしブロックの上に積もった雪は10cmぐらいは鼻息でも吹き飛ぶぐらいなのに途中からはブロックと一体化しちゃってました。 
 これでは全く採寸できません! オロオロしてたらナイツ店主さんが到着。 雪かき&採寸を手伝ってくれました。 僕らがオロオロしながら採寸を始めた頃に周りのチームはチェーンソーが唸って切断を始めてます。 チームチキチキ通信は出遅れたというよりも全然スタートラインに立てない状態。 オロオロしてたら本隊到着で更に大焦りの606!


 ここにきて、ようやく分かった事… 『ド素人の僕らに図面なんて必要ない!』という事。


 こうなりゃ切って削って彫って形を作るしかない! 大まかなラインを引いたらオロオロする必要なんてなかった。 とにかく戦うのみ!! 僕らはひたすらスコップで彫ったり削ったりしました。 しかし全然能率が上がらない。 能率が上がらないくせに疲労度だけは上がる。 
 隣は人海戦術と近代兵器でもの凄い速さだ。 隣のブロックだけではなく、周囲のチームもチェーンソーのエンジン音が響き渡ってる! チームチキチキ通信は指示を仰ぐ声も、指示する声も届かないほど他のどのチームもチェーンソーが活躍してる!


 それでもスコップとノコギリで頑張る僕らの姿は、黒船に刀で立ち向かう武士の様でした。 宮本むなし。
少数精鋭が自慢のチームチキチキ通信は武器もなく作り上げる事ができるのだろうか?? もちろん後編につづく。
by606