606の息抜き 其の壱拾

 ■1月9日 (火曜日)■
 今日から学校も始まり、世間は100%近く通常モード。  ご他聞にもれず、我が家の仕事も昨日から通常モードです。 ただ…お正月に長いこと遊んじゃったので仕事がパニック。 これが本当の『自業自得』ってやつですね! 身をもって知りました。

 昨日から寝る暇なく仕事に追われ続け、若干イライラ気分。
人間という生き物は不思議なモノで、心に余裕が無いと優しい心(気持ち)を失ってしまう。 それは逆に…他人に冷たい人を見たり、気が荒い人を見ても心に余裕が無いと思えてしまう。

 年末、仕事が全部終わって閉店したのに「正月明けまでにやってくれ!」と品物を持って来て言うお客さん。 今朝早くの電話で、「まだできんの? 今から取りに行くから急いでやっとけ!」と二十歳そこそこの若造。 僕はコレも仕事だし、休み過ぎちゃったから悪いと思いつつもムカついた。 通常2000円の仕事を3000円で請求書を書いて来店を待った。 料金に文句があって払えないのならキレてやる覚悟でした。

 午前7時半頃に品物を取りに来ました。 だけど取りに来たのは母親。  面識ある母親(お客さん)でしたが目の周りが青く腫れてました。 早朝の電話と母親の顔を見て息子に殴られたという事は直ぐに分かります。 きっとイラついた息子に殴られたのでしょう。 理由など聞けるワケでもなく… 目を合わせるのも辛かった。 3000円の請求書を2000円に書き直して渡したけど朝から気分悪かった。

 なんともヤリきれない気分で仕事に励みました。

 夕方… 西日がキツくなってきたので工場のブラインドカーテンを下ろそうとした時に、久しぶりに楽しく遊んでる子供達を見ました。 ゴミの詰まったゴミ袋をボール代わりに遊んでる姿は妙に心癒された。 元旦のニュースで恒例の、『必勝』というハチマキ巻いてホテルに缶詰で10時間以上勉強してる子供達なんぞよりも数百倍好きだ!!  もの凄く楽しそうだった!  中には半袖Tシャツ1枚で遊んでる元気な奴もいた。 

 僕らが小さかった頃は落ちてる物全てがオモチャになってた気がします。 ワイワイキャーキャー日が暮れるまで遊んで帰ったなぁ♪ 
 仕事や家事で忙しくて疲れてるだろうに… 母親はキチンと晩飯作っててくれた。 当たり前にしか思って過ごしてこなかったけど… いろんな思いが早朝の出来事と変に絡み合って不思議な気分でした。

 早朝の息子と母親。
早朝の息子は未だにガキなんだろうな! 自分の思い通りにならないとカンシャクを起こす。 それが暴力へと繋がる。 だけど心の中では母親に感謝し、愛情もあるはず。 だけどガキだから言葉で伝えられない。 短気も暴力へと繋がる。 殴る蹴るだけでじゃなくて、精神的にも辛い言葉の暴力。

母親は優しさと厳しさの両刀使いだと思います。 早朝の母親には厳しさが無いのが直ぐに分かりました。 優しさは時として自らを苦しめるという事は身を持って知ってます。 『その優しさが命取りになりかねんよ!』と人から言われます。 十分承知してるつもり。

 たぶん息子は強くなりたいんじゃないかな? 自分の弱さを知ってるのだと思う。 だから自分よりも力がなくて無抵抗な人間に殴る蹴るという暴力を使う。 暴力が許されてる間は自分が無敵だと勘違いしてるに違いない。 これも言い方を変えれば自慰行為。 ツケは必ず戻ってくる。 『自業自得』という形でね!

 いくら体を鍛えて強くなっても、働いて権力を握って偉くなっても…銃口を向けられたら誰だって丸裸。
だけど優しさってのは向けられた銃口を下に向けさせる力を持ってると… 僕は信じてます。

 工場の窓の外を眺めながら… 小さかった頃の気持ちで、また明日から頑張ろうと思った、ほんのわずかな息抜きでした。

by606