52 新兵の悲しい定め |
まさか初日から四面楚歌になるなんて(>。<) しかもイキナリ演習が目の前にぶら下がってる状態。 泣きっ面に蜂! 幹部はもちろん陸曹クラスは結構ストレスが溜まっているように見えた。 そこにきて『本多はやる気のない隊員』という前評判。 江藤はやたらと張り切って見えた。 まるで陰と陽! 面接は幹部だけではありませんでした。 ここは中隊。 中隊の下には小隊があります。 小隊の下は班になります。 『小隊』 新隊員からまず入る小隊は『射撃小隊』 この射撃小隊は小銃でパンパンやる射撃とは違い… ホークミサイルを射る射撃です。 ここら辺は難しいので、また演習の時にでも話します。 中隊で一番偉い人は中隊長(三等陸佐)。 小隊で一番偉い人を小隊長(三等〜二等陸尉)。 教育隊の頃とそんなに変わりませんね。 教育隊にも教育隊長とか区隊長とか存在したもんね。 そんな小隊長と個人的に面接しました。 もちろん中隊長との面接時に合席していたので、僕の悪評判は知ってました。 小隊長: 「本多はあまりヤル気がないのか?」 606: (やっぱり!) 「いえ、ヤル気はあります。 後期教育期間があまりにも腹が立ったので愚痴った事はありました。」 小隊長: 「何年ぐらい継続するつもりかな?」 606: (げ!あまり考えていなかった) 「まずは1任期(2年)を目標に頑張ります。」 小隊長: 「前期教育期間はとても評判がイイけど、後期教育期間はあまり評判が良くないね?」 606: 「後期教育期間は意味不明な厳しさだったので少し斜めを見てました。」 小隊長: 「どこら辺が意味不明だったのかな?」 606: 「発射機の訓練に入るまでに散々走らされて… 訓練が始まる前に疲れきってしまう事です。」 小隊長: 「それは班長のやり方だから仕方ないわな。」 606: 「そんなもんですか?」 小隊長: 「そんなもんだ。」 あとは何を聞かれたかは覚えていないけど、なんとなく四面楚歌に輪を掛けたような面接だった。 でもこの小隊長は凄く話が分かる人だったので、江藤が僕の悪口を言ってるのは承知の上だったみたい。 この面接以降、少しだけど光が見えた。 しかし、そんな光は江藤にことごとく潰され続ける。 小隊長との面接を済ませて、事後の指示は訓練場での演習準備という事。 以前みたいに訓練場までは駆け足で行く必要はありません。 のんびり歩いて向かいます。 そんな時に懐かしい掛け声「左!左!左〜右!」 僕達の後から入った教育隊御一行です。 相変わらず厳しそうな班長に捲くし立てられながら駆け足行進しています。 「まわれ〜右っ!」 おおおおおおお懐かしい。 ざま〜みろ〜♪ 僕達は高校を卒業してそのまま入った3・4月隊員。 3・4月隊員以外は中途採用で入った隊員です。 高校を中途退学した人や、仕事を辞めた人などが多い教育隊です。 この頃は8月隊員ですね。 まぁ、3・4月隊員よりも血の気が多い人間ばかりなのはココだけの話。 そんな懐かしい『まわれ右』を眺めながら訓練場まで歩きました。 のんびり歩いて訓練場に行っても、駆け足行進で行っても給料は同じなのが自衛隊。 途中で缶ジュース買って飲んで休んで行っても給料は同じなのが自衛隊。 訓練場の入り口では教育隊の頃と同じように許可証を貰わなければなりません。 1ヶ月後には自由に出入りできる個人の許可証が貰えるので、そうしたら敬礼するだけで通過できます。 それまでは面倒だけど、必要事項を書いてから許可証を貰わなければなりません。 訓練場に到着したけど、何処に行けばイイのか分かりません。 仕方なく訓練場にある309中隊の事務所に寄って、案内してもらいました。 「じゃあ岡林三曹の指示に従って演習の準備をしてくれ!」と言われて、バラキューダという擬装網を編み込む作業を始めました。 バラキューダは1枚8畳サイズの物を4枚結んで大きな1枚を完成させます。 演習時、発射機やレーダーを昼間に上空から発見されないようにカモフラージュする物です。 作り方を教えてもらい、青空の下&芝生の上で一生懸命に作りました。 コツは『適当』らしいので、適当にやっていたら褒められた♪ 細かく結ぶと後で解くのが大変らしいので、本当に適当に作り続けた。 「いいぞ!本多!」 中隊に配属されて初めての仕事。 中隊に配属されて初めて褒められた♪ 少し遠くで同じ作業をしている江藤は、解けないように頑丈に結んだために叱られているではないか! ちょっぴり嬉しい。 真顔で眺めつつ、腹の中では「ざまーみろ!」と反撃の狼煙を上げた。 「江藤! 本多のやり方を見て勉強しろ!」と岡林三曹。 (^-^)ウッシャー! 一歩リード♪ 僕は江藤に教えながらバラキューダを作りました。 休憩時間を挟んで延々とバラキューダを作り続けます。 江藤もコツを覚えたので、一緒に喋りながら作業を進めた。 演習の準備も楽しくできて、江藤とも仲良く喋れて… 凄く有意義な時間。 一日の課業が終わり、晩飯・風呂を済ませて慣れない居室の丁稚に戻りました。 相変わらず芝谷一士は細々と注文をつけては働かされる。 お湯がぬるい! コップが汚い! 居室では文句無く一番下の階級なので我慢して働くしか方法はありません。 掃除を済ませて皆にコーヒーや紅茶を入れて、飲み終わったカップを洗って片付けたら、ようやく一段落です。 消灯まで1時間が寛ぎタイムなのですが、今度は班長の半長靴を磨く仕事が待っていました。 仕方ないですね。 昔からの習慣で… 居室の班長の半長靴を毎晩磨かなければならない。 正直臭い(>。<) 自分の半長靴でさえ臭いからオドイーター(臭い食)を入れてあるのに… 他人のは何倍も臭い! 半長靴を磨き終わって陸曹部屋に居る班長に返しに行った帰り… 僕の居室の隣にあるエロビデオ古田二曹が酒に酔った勢いで僕の胸ぐらを掴んでこう言った。 「黙って部屋に来い!」 何の事かさっぱり分からないままスッゲー馬鹿力で汚い居室に入れられた。 ベットの下には缶ビールの空き缶がいっぱい。 ビデオテープはテレビの上に山積み。 僕は犯されるのかと思って、いざとなったらぶっ飛ばす覚悟を決めてました。 だって自衛隊にはホモが存在すると聞いてたもん! しかし怖かった。 やっと明日からの光が見え始めたのに… そして古田二曹が口を開いた。 「てめぇ! 誰がヤクザだぁあ?」と… by606 |