17 精神教育
 【精神教育】
 自動車学校で言うところの実技が基本教練なら、講習が精神教育と言ったところでしょう。 座学とも言う。

 旧陸軍や旧海軍でよく聞く『精神教育』という単語。 「まだ使ってるんだぁ?」と不思議に思いました。 だってキチンと予定表にそう書いてあったんだもん! そりゃあ最初に聞いた時は怖かったですよ。 名物『精神注入棒』とかが登場して好き勝手に殴られたり叩かれたりすんじゃないかってね。
 もちろんそんな危険なアイテムは登場しません。 常に睡魔との闘いだった精神教育。

 各区隊ごと、銃の分解組み立て掃除をするにも使ってるプレハブの教室を交代交代に使って行われた精神教育。 講師は優しい区隊長です。 常に指揮棒を持って笑顔で歩き回ってる区隊長です。
 内容は… 自衛隊の中でのルール説明が主。 赤い小さな教本(赤本)と、これまた小さな青い本(青本)と筆記具を持っての教育です。 正直言って脳だけを使えばイイ仕事でした。 が! 常に脳は休憩中だった。 唯一、体が休まる時間でもあり… なにか余計な事を考えられる時間でもあった。 

 しかし、たった一つだけ「早く教えてくれよ!」と言いたかった事がありました。
それは『夜間、隊員の階級が判断できない場合は敬礼をする必要がない』というルール。 これは少し前に敬礼をせずに殴られたから! あの時は暗かった。 考えてみたら階級章も見えなかったくらい暗かった。 このルールを知ってたのら反撃も許されたのかも? 
 それからです。 脳死状態だった精神教育の時間が大事だと気がつき…区隊長の話を食い入るように聞いたのは。

 ルールを知らずしてゲームはできません。 ここでの生活はできません。
階級が一番下だからルールを知らないという事はゲームに参加する資格も無いに等しい。 それからはもちろん、それまでに教えられたルールを覚えるが如く勉強しました。
 時間があれば赤本&青本を読んでいた。 特に昼飯の後は居室で待機するのが常で…昼休みとは言え昼寝はもちろん仮眠や寝てる格好をしてるだけで怒られた。 せいぜいマンガを読んだりテレビを見て過ごすのが、これまた日常。 好きなテレビを見れないのならマンガを読んでいたほうが楽しい。 でもマンガよりも教本を読んでいたほうが僕は楽しかったです。
 あの頃はヤングジャンプ・ヤングマガジンが飛び交う中で…誰か一人がエロ本を買った事により、突如エロ本が飛び交うようになった。 ちょっと気が散った18歳。

 だいたい毎日高カロリーな食事を与えられていては精力も抜群です。 しかしエロ本なんて買う勇気がありません。 まぁ当時はアダルトビデオ全盛期。 その後でレーザーディスクのアダルト版が登場。 そしてDVDの時代。 まぁビデオの時代が長かったですが… 僕らの時代はエロ本。 悲しいね! 今の時代の若者は恵まれているよ!
 誰かが買うまではヤングジャンプ・ヤングマガジンのそれっぽい絵で満たされていた。 トイレの個室がイメージルームでした。 まぁこの話は長くなるし… 皆さんが一番知りたい部分でもあると思うので、後日ゆっくりと♪

 そんな中で教本を読んでる僕は馬鹿みたい。 でも一通り熟読した。 I LOVE SEVENの初版を熟読した時と同じように! 本がバラバラになるまで読みました。 アングリーパワーは底無しで無限大!
 このおかげで3年後の昇進試験に役に立ったのはまだまだ先の事。 とにかく、いくら上官であろうと筋の通らない事に対して一言発する事ができるようになれば自信が持てる。 縦社会を上手く掻い潜るにはルールを学ばなきゃ!

 精神教育中に瞼を閉じる隊員がいれば速攻で連帯責任が与えられます。
駆け足。 腕立て伏せ。 スクワット。 罰の種類は豊富です。  誰しも罰は受けたくないので、隣の隊員が居眠りをし始めたら起こし合って真面目に授業を受けました。
 それでも居眠りする隊員は後を絶たず… 必ず叱られては罰を受けてました。 そりゃ勉強好きな隊員は一人として居ないのが自衛隊。 勉強好きな奴だったらこんな所に来るはずないもんね♪

 ペンは剣よりも強し! ペンは銃よりも強し? それは時と場合♪ 

by606