130 ホークミサイル実弾実射訓練 其の五 |
頑丈厳重なコンテナの蓋を開けてローダー車のアームを使って引っ張り出します。 「ゆっくり! ゆっくり!」と、ズボっと抜き出してバラバラになった実弾の全貌が明らかに! 「こんなふうに格納されてるんだぁ。」と初めて見たコンテナの中。 実際、コンテナすら初めて拝むのですから♪ 手順に従って組み立てます。 僕は班長の合図に従ってローダーを動かすだけ。 班長以下3名はコマメに動き回ってミサイル胴体に羽や方向を変える羽を取り付けていく。 全部で4枚の羽。 1つのボルト&ナットでも、トルクレンチを使って決められたトルクで締め付ける。 もちろんキビキビとした動作と発声が肝心。 僕は班長の腕と指の合図でローダー車のアームを動かして、ミサイルを持ち上げて回転させたりするだけ。 ローダー車から降りて作業をする事はありません。 分かりやすく書くと… 工事現場で重機を動かしてる人みたいな仕事です。 班長の合図を大きな声に変えて、復唱するが如く返事をする。 阿吽の呼吸の大切さを知りました。 以心伝心に似た動作。 妙なカッコ良さとプロ意識。 「今、この時間… 僕が自衛隊の中で一番カッコイイのでは?」という錯覚まで感じた。 @馬鹿 制限時間とか基本教練を無視して一通り実弾を組み立てました。 4人で初めて組み立てた実弾。 やっぱり迫力がありましたね〜♪ 「コレが本当に飛ぶんだぁ〜!」と、下から見上げた。 あの頃にデジカメがあったら間違いなく写真を撮っていただろうなぁ。 毎日実弾を組み立てる練習(訓練)ができる喜びを強く深く噛みしめた。 今度は組み立てたミサイルをバラしてコンテナに格納する作業です。 有事の際はミサイルをバラすような事はないはず! だって組み立てたら撃っちゃうんだもん。 撃ったらバラす必要どころかミサイル自体ありゃしませんから〜。 結構面倒な作業でした。 お片づけ! みたいな…。 コンテナに蓋を閉めたらエアーコンプレッサーを使ってコンテナに空気を注入。 「必要ないんじゃない?」 と言いたかったけど…マニュアルに従うのが自衛隊。 翌日からの訓練は時間を計って、4人の動きをキビキビと合わせて組み立てる… 所謂『見せる仕事』の練習。 ただひたすらミサイルを組み立ててはバラす。 その繰り返しの日々。 さすがに一週間も同じ事を繰り返していると飽きてきます。 それでも『見せる仕事』の練習は続きました。 僕は僕で発射機のダミーミサイルを積んだり、降ろしたりする仕事もあったので、それが結構気分転換になりました。 ミサイルを3発ローダー車に積んで燃料補給に行く時などは、すれ違う新隊員教育隊の羨望の眼差しを大量に受けては「俺を見ろ! 俺を見てくれーっ!」と心の中で呟き… 見学に来た一般の方々や、他所の職種の部隊とすれ違う時も「嗚呼、僕って素敵♪」とか一人で勘違いしながらローダー車を走らせていた見られサド。(今と全く変わらないね) ローダー手にはミサイルの組み立て・ミサイル運搬・ミサイル搭載が主な任務です。 つか、これが仕事なのですが… もう1つ重要な任務があります。 それは、組み立てたミサイルをパレットに積む際に一発でローダー車の爪をパレットのパイプに引っ掛ける事。 もの凄い平衡感覚がないと1発ではドッキングできません。 発射機にも同じようにドッキングさせるけど、発射機は回るのでドッキングは簡単にできます。 しかしパレットは移動はできるものの、ミサイルを積む際は全く動きません。 強引に押し込む事はできるけど… それはインチキ! 1発でドッキングできない時は、隙間の長さを班長に教えてもらって、一度ローダー車を後退させて微調整しながら再びドッキングを試みる。 この作業は誰からも注目される。 大勢の目の前で行う任務。 こうなったら1発でドッキングさせたい!! だから暇さえあれば訓練場の片隅でドッキングの練習をしていた。 by606 |