122 演習の思い出 其の七
 
 自衛隊モドキが町を歩くのはそれほど違和感ないけど…
 自衛隊が町を歩くと違和感だらけという事なのですね(^-^)


 【エピソードE】 戦死(前編)

 演習には通常の演習と、中隊検閲という2つのステージがあります。
早い話が中隊検閲の為に通常の演習をするようなものですが…  戦争の練習が演習で、中隊検閲の為の練習も演習なのですね。  理解に苦しむ部分ではありますが、理解に苦しむ部分が多いのが自衛隊なので。


 通常の演習は駐屯地から撤収して演習場に展開して、ミサイルを撃つマネだけして撤収し、駐屯地に戻るだけ。
つまり中隊長以下の幹部が、自分達以下を訓練するだけ。
もちろん中隊長以下の幹部もそれなりに訓練はするのですが…  やはり形だけのモノです。

 通常の演習はOD色の戦闘服。  中隊検閲となると迷彩服を着る気合の入れ様も、やはり形だけのモノ。
 現在の自衛官はOD色の戦闘服ではないので常に迷彩服なのかな?  一日中迷彩服を見ていたら目が変にならないのかな?


 中隊検閲は陸上幕僚幹部(雲の上の階級の方)が数人やって来て、中隊長以下の士気から状況下における動きを視察する年に1回の試験みたいな演習です。
なので様々な状況を幕僚幹部が連れて来たそこそこの階級の隊員が作り上げます。

 「ゲリラが来たぞーっ!」

 「毒ガス発生!」

 「発射機が破壊されたぞーっ!」 などなど飽きもせずに次々と面倒な事を言いやがった。


 ゲリラが来たら誰何して、怪しかったら連行すればいいし…  毒ガスなら防護マスクを装着すればいいけど…  発射機が破壊されたらどーしよーもないじゃんね!
 「破壊されたアルファ発射機のミサイルをブラボー発射機に換装せよ!」とか言われたって、普通なら破壊された発射機からミサイルを外す事なんて不可能じゃん!
 それでも言われた通りにしなければイケナイのが自衛隊。


 通常の演習は『一夜二日』と自衛隊用語で呼ばれる一泊二日の訓練。  『夜』と『泊』の違いは、泊まるのではなくて、夜こそ訓練!みたないところから言われるのだろうか?

 それが中隊検閲となると『二夜三日』になる。  一夜二日でもキツイのに、二夜三日ともなれば倍以上キツイ!
 そんな大変な二夜三日の中隊検閲の最中に生涯忘れられない状況を与えられた。  それが『戦死』。

 戦死者とは…  幕僚幹部が連れて来たそこそこの階級の隊員が、ランダムに次々と戦死ステッカーを貼って地面に寝かせる仕組み。

 ただでさえいっぱいいっぱいの人数で部隊を展開しているのに…  一人欠けたら何倍も大変なのに…  戦死者を出されたら一溜まりもありません!  


 「○○士長戦死!」  「○○3曹戦死!」という情報が口達で伝えられてきます。
 
 「えーっ!? 班長まで戦死? どうやって今から小隊が動くの??」  正直1クルー3人が最低必要人数だった射撃小隊。  発射機の整地や撤去は2人では困難。
 それなのに僕の班長も、僕の部下も戦死した事を知って途方に暮れる。


 だったら地対空ミサイルよりも64式自動小銃で戦うのが普通じゃないの?  ロケットランチャーもオブジェだけど足元に転がってるし!


 そんな悲惨な状況下で出された命令が『撤収開始命令』でした。  つづく
by606