100 陸士長に昇級

 入隊した時は二等陸士。

 二等陸士から一等陸士になるまでに約10ヶ月。  腕の階級章が1本線から2本線になり…  そして入隊してから約2年で3本線の陸士長へと昇級した。
 別に成績が良かったワケでもなく、もちろん試験があるワケでもない。
 陸上自衛隊では『2年』というのは『一任期』という節目の年で…  2年で辞めれば任期満了で胸を張って辞める事ができます。  僕が居た頃は、2年勤めただけで40万ぐらいの退職金が貰えました。  これが一日でも早く中途退職をすれば退職金が¥0となる。
 まぁ何が笑えるって…2年勤めただけで退職金が40万も貰える会社は滅多にないですよね。  バブル崩壊寸前の当時の社会でもなかったはず。  現在でもそんな会社・企業はあり得ないけど、自衛隊は今も変わらぬ退職金制度が残っているのかな?

 高卒で2年働いて退職金が40万円貰える所は親方日の丸自衛隊ぐらいなものでしょう。


 陸士長に昇級するという事は、一任期で辞めるのではなくて任期継続をするという事。
 2年で辞めて家業を継げばいいのか?  このままダラダラとまた2年過ごしたほうがいいのか?  当時は『楽な道』を選ぶのが当たり前だった僕。  ちょっと迷ったけど、待遇が良くなる自衛隊生活を続ける事に決めたのは言うまでもなかった。  部下も自由時間も増えるし…  雑用は減るし…  言う事なし♪  誰にも相談せずに任期継続を決めた。


 ここで気になるのが40万円という退職金。  これはさらに2年後にも二任期満了という事で2回目の退職金が貰えます。  一任期分の退職金をその場で貰う事もできるし、2年後に一任期分と二任期分を合わせて貰う事もできました。  二任期満了の時は一任期満了よりもさらに多い退職金。  僕…都合90万以上の退職金を受け取ったよ。  バブリーな国営企業だよね!


 一任期で退職すれば良かった事。
 それは2年後に退職してから思った事なのですが…  『楽』を覚えてしまったので、『苦労』に耐えられなくなった事。  これは大きかったですね。  下っ端のまま辞めていれば、家に帰ってからもっと頑張れたのかも。  陸士長になってからは『要領』というものを覚えてしまった。  怠ける事を覚えてしまった気がします。


 一任期で退職しなくて良かった事。
 僕の居た駐屯地では二任期継続=大型免許取得という条件みたいなものがありました。  「二任期継続しなきゃ免許は取らせないよ〜!」みたいな条件。  僕はこれが任期継続の大きな理由でしたね。  
 入隊する前に「すぐに大型免許が取れます!」とほざいた愛知地方連絡部の陸曹。  なにもかもが嘘だった。

 がっ!

 授業中はもちろん、放課後も一緒に遊んでた高校から一緒に入隊した親友は豊川駐屯地だったけど2年以内で大型免許を取得して、一任期で退職した。  「なんだこの差は?」と…同じ陸上自衛隊でも部隊ごとに差があったのは確かです。
 授業中はもちろん、放課後も一緒に遊んでた高校から一緒に入隊した親友は、美味しいところばかりで羨ましかった。  大型免許はもちろんの事、盆・正月の休暇は僕より必ず2日多かったし、糧食班にも行かなかった。  同じように入隊したのに方や天国、方や地獄。  それでも給料・ボーナス・退職金が同じなのが自衛隊。


 一等陸士から陸士長に昇級するのは二つ返事で済むけど…  それなりに深い思いはありました。
 実際、自衛隊に2年も居れば落ち着きます。  どんどん部下が入ってくるし、最初の演習から4ヶ月に一度くらいは演習もこなして来ています。  ベテランの域に知らぬ間に入ってる。  つか…ベテランの域に入っていないと部下にナメられる。  自分より喧嘩の強そうな部下に威厳を張るのも疲れるけど必要だし、威厳を張りつつも仲良くしなければならず…  縦社会の難しさも知る。
 更には一等陸士の頃にはあまりなかった『責任』も強く大きくなるし…。


 なんにしても1つでも多くの事を勉強しておかないと、上官からも部下からも頼りにされなくなる。という事。
 頼りにされると面倒だけど…  それがこれからの『夢』に繋がる。

 任期継続をしたと同時に叶う事のない『夢』に向かう事を決意しました。  夢がなければこんな所には居られません!  小さな夢はたくさんあったけど…  バカでかい夢を見るのもまた面白いよね♪  笑顔で任期継続!  笑顔で陸士長に昇級!


 こいつは一任期で辞めれば良かったのに…
 一緒に陸士長に昇級する事を中隊長に申告した。

 江藤と一緒に(>。<);
by606